竹内アンナの表現巧者

ある日名古屋のFM局を聴いていた時、ポップではじけたとても夏らしい音楽が流れてきた。
それが、シンガーソングライターである竹内アンナとの出会いである。

泡沫SUMMERは、2022年夏の三か月連続配信の前に発表されたシングルで、番組ナビゲーターの高木マーガレットさんの親友であるという関係もあって、何度かオンエアされていたのを覚えている。
音楽の評価を言葉で表現できるスキルが足りないので、うまく伝わらないところがもどかしいが、私はこの「泡沫SUMMER」の世界観をとても心地よいと思っている。

恋愛ソングの描写とは、青春であったり、うまく事が進んでいるときの息遣いであったり、失恋を嘆くなんてシーンが浮かぶのが典型的なパターンじゃないかと思う。
その典型的なパターンの中で、モチーフを以てたとえ話をする。そんな感じの曲が多いような気がする。そういった曲に少しばかり新鮮味を感じなくなっていたころにこの曲に出会った。

歯切れのよいリズムと、ネイティブレベルの流暢さで畳みかける彼女のラップスタイルの虜になった。
何を差し置いても、その楽曲のストーリー性がよく練られている。

この曲で彼女が歌っているのは、気の抜けたビールと生暖かい風を感じさせる夏の夜のダルさ。そこに揺れる女心を炭酸を連想させるポップなテイストでカラリと仕上げている。
情熱的な愛の表現でもなく、失恋の際の何らかのイベントでもない。
爽やかで清涼感のあるテイストに実は奥が深い戸惑いの気持ちが揺らめいているところをうまく表現した。

竹内アンナの一番の特徴は、作品のストーリーが一貫した奇麗なストーリーにまとまっていること。
散らばっている一瞬のドラマを、ストーリーに昇華させる。
それを、文章ではなくて、メロディーとリズム、音色とコード進行で表現する。

2024年3月に発売された「DRAMAS」が彼女のこのクリエイティビィーをよく表している。